文学フリマに行ってきた。
そこらじゅうに人、人、人。
1440ブース。
全員何かを誰かに伝えたくてここにいる。
人の数だけ伝えたいといたいエネルギーがここにあると思うと、少しクラクラした。
「よかったら試し読みしてください。」
「フリーペーパーあります。」
通り過ぎようとする度に声をかけられる。
なんだかこのイベントはほかのマーケットイベントと違ってスルー力が退化する。
声をかけられる度に立ち止まってしまってなかなか進めなかった。
言葉という表現手段を使ってくる人をわたしはなんだか無碍にできない質らしい。
そんな風に牛歩でフリマを楽しんでいたところ、うつむき気味で自信なさげに出店されているおじさまがいた。
他の人と違ってぜんぜんお薦めしてこない。
なんとなく気になって本を手に取り立ち読みすると、絵に描いたようにそわそわし始める。
読んでほしいんじゃないのか、なにを恥ずかしがっているんだ
と偉そうにも思ったのだが、よくよく考えるとそりゃ恥ずかしいよな。
目の前で自分の心の中を見られているのだ。初対面の見知らぬ女に。
今は匿名で自己表現が手軽にできる時代だ。そこをあえて超えてきて、作品を自分の手で売る。
どれだけ勇気がいることだろうか。
それでもみんながここに集まる。自分がここにいることを叫んでいる。
そんなに深く考えないでいる人もいるかもしれないけど、やっぱりここにいるだけで尊敬してしまう。
いまだ踏ん切りのつかない自分にはキラキラしてみえた。