君たちは月に行くことはないだろう

先日、ある講座を受けていたときに言われた言葉である。たしか、重力によって重さは変わるという話をしていた流れだった。

月だと重力が変わるので、重さも変わりますが、そのことは覚えなくてもいいです。

君たちは月に行くことはないだろうから。

鈍器で殴られるような衝撃を受けた。確かに行こうとも行けるとも思ったことはなかったが、そうやって改めて他人に言語化されると自分の可能性を否定されたようでショックだった。そして、反発したくなる。

「この人に私の何が分かるというのだ。だって、お金を払えば宇宙旅行はできる時代なんだし、これから私が猛勉強して宇宙飛行士になるかもしれないじゃないか。」と。

先日、野口聡一さんのJAXA退職の記者会見があった。その会見の質問の中で「月に行く可能性はあるか?」というものがあった。それに対して、野口さんは中居正広さんの言葉を引用し、「月は行けないとは思ってない。月に行く可能性は1~99%だと思っている。」と答えた。彼にとって月に行くことは、0%の事象ではないなのだ。彼の立場上、当たり前と言われれば当たり前なのだが、自分の父親より歳上の方より、自分の可能性を信じられてないなんて、なんだかとても悔しかった。

立場や環境は人の想像力を狭める。子供の頃は自由だった思考も、社会に適合するように無意識に矯正される。ある程度は必要なのだが、それ以上に適合してしまうと、まんまと狭い世界で搾取される人間になってしまうのだ。それは嫌だ。私は広い世界の中で、改めて月に行かないことを選択できるようになれるだろうか。